※写真:レオ・シロタと貴志康一
最初の録音から36年ぶりに貴志康一作品をCD収録をいたします。ピアニストは渡辺健二氏です。同時に木下牧子新作モノオペラ『暁の星』を収録します。木下牧子作品については別途ご紹介させていただきます。
貴志康一作品収録曲は、赤いかんざし、かもめ、天の原、行脚僧、かごかき です。
貴志康一は18才でスイスに留学し、後にドイツに住み、音楽活動に身を捧げ、自作品をドイツのベルリンフィルハーモニー交響楽団他と自らの指揮で演奏し、その間、同時に、日本を知ってもらおうと、日本で日本について記録制作した映像をドイツで見てもらうという日本紹介を行い、帰国してからは現在のNHK交響楽団の指揮者としてベートーヴェン第九番交響曲を日本で初めて暗譜で指揮をし、その音楽性で社会的にセンセーショナルな感動を呼び起こし、これから更に活躍を期待された28才でこの世を去りました。壮絶な生き様と感じます。
スイス、ドイツに滞在の間も、帰国してからも、少なからず大きな困難があったことは知られていると思います。しかし貴志康一は、どんな時も音楽に夢と希望を持ち続けていたので、困難に屈せず、音楽家として一生懸命に生き切ることができたのだと私は思っております。貴志康一の純粋な魂の熱く燃える情熱の炎を感じるのは私だけではありません…。私の知るところでは、指揮者の小松一彦氏(1947-2013)は貴志康一の音楽の本質というものに非常に感動しておられました。演奏会の時には、貴志康一作品のスコアを見ながら解釈についてのお考えを詳細にお話しくださいました。
今回のCD収録にあたり渡辺健二氏とは、貴志康一自筆オーケストラスコア、作成時期が異なるピアノ伴奏譜から音符を確認しつつリハーサルに臨んでいます。
貴志康一の作品に込められている、彼の音楽への純粋で熱い情熱と信頼を次世代に継いでいけたら…と願っております。
本日4月20日のニュースではCOVID-19、9波の可能性が報じられています。楽器である身体を護りつつ心して演奏に臨みたいと思っております。
指揮者の小松一彦氏は、貴志康一の作品を演奏することに並々ならぬ情熱を注ぎ、また、私が貴志康一の歌曲を演奏するにあたり、機会あるごとに重要な示唆を与えて下さいました。感謝しております。