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バロックオペラMulier fortisについて ①

※ 写真:Mulier fortis 1698年ウィーン初演 作曲家シュタウトによる自筆原譜表紙

《 Mulier fortis (勇敢な婦人) 》について

Mulier fortis(勇敢な婦人)は、細川ガラシャの信仰に生きる姿を通して、忍耐強さ・道徳的強さ の美徳を称賛する内容のオペラです。

細川ガラシャ、という名前をお聞きになられた方は多いのではないでしょうか。37 才の辞世の 句、「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」でも知られる細川玉子(洗 礼名ガラシャ,1563-1600)は、夫・細川忠興(1563-1646) と交わした「人質にはならぬ」との約束 を、イエス・キリストへの信仰ゆえに果たしました。

その生き様が宣教師を通してヨーロッパに伝わり、作曲は、当時活躍していた、ウィーンのイエ ズス会学校楽団長のベルンハルト・シュタウト、脚本・演出は校長のヨハン・ アドルフが担当しました。1698 年 7 月 31 日(聖イグナチウス祝日)に、レオポルド 1 世、エレオノーラ后妃を はじめとする皇族方の前で初演されました。演奏者はイエズス会学校の生徒とプロの音楽家でありました。

私は、この作品が見つかったことは、当時の読売新聞の記事で知っていました。私がウィーンで 研修していた 2001 年に、楽譜発見者の新山富美子さんに会いました。新山さんはウィーン大学で 音楽学の博士号を取得しておられます。新山氏は、この作品がウィーン国立図書館に在る、とのパ ス神父様から確かな情報を得ており、必ず在ると信じて見つけ出したそうです。

新山さんは知人の イタリア人古楽家に依頼して原譜を校訂(編曲)し、各研究者の論文も掲載してザルツブルグで出版しました。出版をとても急いで行ったとのことでした。 その楽譜を私は新山さんから購入して日本に持ち帰りました。その日以来、Mulier fortis との日々が始まりました。細川ガラシャの邸宅跡に建てられたと言われる大阪の玉造教会で、2002 年、池長 潤大司教司式で「作品 Mulier fortis の奉納ミサ」をあげていただくことが叶い、私はウィーンから 新山氏をお招きしました。

ミサでは、この作品が創られたことへの感謝と細川ガラシャの感情が込められている Mulier fortis の演奏と上演において、その信仰に生きた清冽さと祈りが音響と舞台に現れるものになりますよう、お祈りしました。

そのミサは NHK ニュースで報道されたので多くの方に、Mulier fortis を知っていただけたと思います。

新山氏の出版なさった楽譜は急いで作業を行ったためと思いますが、演奏すると不協和音になる箇所が散見されましたので、2011 年から本格的に校訂作業を始めました。作曲家の福富秀夫氏、ピアニストの佐久間龍也氏、声楽家・作曲家の加賀清孝氏の手で校訂が成され、2020 年 7 月に最終校訂となりました。

その楽譜のお披露目演奏が 2021 年 3 月 6 日に東京文化会館小ホールで決まっていましたが、コロナ感染症防止策のために中止になりました。

今後も多様な研究者の方々と共に、細川ガラシャの生き様について、そして Mulier fortis の上演内容について考え、舞台制作に反映できればと願っております。バロック時代の作品を、そのまま学術的な展示物として上演するのも大変に意義のあることと思いますが、私は細川ガラシャの息づかいがリアルに感じられ、一緒に情感を込めていける舞台を希望しております。

2023年度「オペラMulier fortis公演実行委員会」によって、Mulier fortis(勇敢な婦人・細川ガラシャ)公演が実現しますよう、できることで努めたいと思います。

公演が決まりましたら、即刻、ホームページにてお知らせさせていただきます。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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