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演奏:セヴィリアの理髪師 ロジーナ

※ロッシーニ作曲オペラ《セヴィリアの理髪師》ロジーナ。バルトロはバリトンの故・斎藤俊夫氏(斎藤氏は、居るだけでその場に安心感を与えてくれました。バルトロは持ち役として多く歌っておられました。若くして天に召され、皆に愛されていたので、関係者が皆、とても悲しみました。学校芸術鑑賞会主催者に見せてもらった感想文に「バルトロが汗を飛び散らかして熱演しているのが最初はおかしくて笑ったが、見ているうちに感動した。震えた。」というのがありました。)

声楽家の多くは、発声を整えたり調子を確認するために歌うアリアや曲を持っているのではないかと思います。ビルギット・ニルソン氏がモーツァルトのオペラ《魔笛》の夜の女王のアリアを発声調整に歌っていたのは知られていると思います。ワーグナーオペラ作品には欠かせない声楽家として重厚な歌唱で人々を魅了していた、その歌声は、モーツァルトの夜の女王のアリアで調整されていた、と聞いています。共演した日本のメゾ・ソプラノの方は、コンコーネから3曲を続けて歌って「これで発声を整えている」とおっしゃっていました。私の恩師である柴田睦陸先生の『発声論』(音楽芸術,音楽之友社)に、「コンコーネを歌うのは良い発声練習になる。」と記しておられます。

そうした曲は歌唱体験の中で自然に歌手に与えられていくように思います。私の場合は、セヴィリアの理髪師のロジーナのアリア ”Una voce poco fa” でした。時間の制約がある時は、途中の io sono docile~から歌います。ケルン音楽舞踏大学の入試時にも、ボゼニウス先生と決めたこのアリアを歌いました(F-dur)。試験を聴いた歌曲伴奏の教授に「メゾソプラノか?」と言われたのを覚えています。

音大の指導においても、学生さんにとって自分の歌声の調子を知ることができて調整できるアリアが自然に見つかるようにと願っていましたが、やはり、時間が必要のように思います。それは、公式の演奏会を経験するうちに、必要に迫られた中で見つかっていくのかもしれません。

自分の歌声を守り調整してくれるアリアに出会えたことを心から幸いに思います。大切にします。

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